忘れられない記憶を言葉に      
LED TOKYO株式会社

「最大の危機」を乗り越える過程で 「大切なもの」に気づけた
LEDビジョンをはじめとしたデジタルサイネージの開発・販売を手掛けるLED TOKYO。2015年創業の同社は、いわゆる「後発組」であるにもかかわらず、※ある調査では、メーカー別に見たLEDディスプレイの導入面積でシェア1位となるなど、業界内で十分な存在感を示している。そうした成長を遂げた同社だが、じつはコロナ禍において最大の危機に陥ったという。その危機を脱することができた要因を、同社代表の鈴木氏は、「会社の仲間のおかげ」だと語る。さらに、危機に陥った際、ある人の「考え方」を盛り込んで定めた「バリュー」は、改めて気づいた「ビジネスの根源」を表現したものだという。「苦しい時期があったことで、大切なものに気づけた」と語る鈴木氏に、一連のエピソードを語ってもらった。
この記事をシェアする
XFacebookLine
会社を「利益体質」に戻せた
〈苦しい時期に頑張ってくれた社員〉
一 2015年の創業以来、会社は順調に成長しているようですね。

LEDビジョンは光による空間演出効果が高く、特に店舗内装等の引き合いが多いのですが、販路拡大にいち早く取り組んだことが会社の成長につながったと考えています。その1つが「スポーツ業界」でした。特に「マイナー」といわれる競技です。今回のパリオリンピックで大躍進したフェンシングですが、7~8年前はまだまだ「マイナー」の部類でした。聞くところによると、当時は日本選手権でも観客は数百人程度で、その8割は選手の家族関係者だと。あるときフェンシング協会の関係者の方々と食事をする機会があり、なんとか注目度を上げられないかという相談を持ち掛けられ、そのとき提案したのがフェンシングの競技台にLED装置をつけ、ハーフタイム中に光の演出によるショーを行うことでした。実際、ある大きな大会で行ってみたところ、様々なメディアに取り上げられるほど話題になりました。その話題性が、その他のスポーツ協会関係者の目にとまり、「私たちのスポーツもLEDで盛り上げてほしい」と広がっていきました。

一 これまでにない市場を創り出したと。

そう考えています。一方で、音楽業界ではLEDビジョンによる演出効果は一部取り入れられていましたが、LEDでスポーツを盛り上げている私の取り組みを知った制作会社の監督から声をかけられました。様々なメジャーグループのMVやライブ会場でLEDによる演出を行い、さらにはテレビの「レコード大賞」の演出もお手伝いするようになりました。

一まさに急成長ですね。

確かに、2019年まではそうでした。その状況が一変したのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。取引先だった飲食業界、スポーツ業界、エンタメ業界が全体として「自粛」に入ったため、仕事の依頼がゼロの状況になりました。先の見通しがまったくつかないなか、どのように売り上げを立てるべきか必死に模索していたところ、「起死回生」と言える事業があったのです。いまでもオフィスやホテルの受付などで目にする「サイネージ検温システム」の販売です。海外製品を独自に仕入れるルートを紹介され、会社に残っているキャッシュをすべてつぎ込み可能な限り仕入れました。人的リソースもすべて注ぎました。正直、倒産も覚悟した「最大の危機」でしたが、なんとかこの事業で売り上げを立てることができ、会社を維持できました。

一 それからどうしたのですか。

コロナ禍がだんだんと収束するにつれ、LED関連の仕事が少しずつ入るようになってきたなか、社員のみんなには、正直、「我慢」してもらいました。役員陣の報酬はカットし、部長クラスの給料も下げました。経費を使う場合は「1円の無駄もしない」という意識を社員全員に徹底して持ってもらうようにしました。また、「アメーバ経営」の考えを取り入れ、部門ごとにPLをすべて用意し、「社員一人当たりの利益額」まで把握する体制にしました。それが2022年の夏くらいのことで、少しでも会社を「利益体質」に戻すために、半年間は徹底して取り組みましたね。社員のみんなにとってはいままでにない厳しい環境だったこともあり、窮屈に感じたと思っています。そんななかでも、この時期に一人ひとりの社員が頑張ってくれたおかげで、再びキャッシュを積みあげられる体制に戻せることができました。

「ビジネスの根源」に気づけた
〈「人として」を重視するマンション会社の社長〉
一 苦しい時期があったのですね。

なんとか乗り越えられましたが、確かに苦しかったですね。そしてこの時期に、「ミッション、ビジョン、バリュー」という経営の中核に置く概念を掲げられたことも、当社にとっては大きな変化でした。いつか掲げなければいけないと思っていたのですが、どうしても「業績」のことを優先してしまい、なかなか着手できずにいたものです。このような苦しい時期だからこそ、企業理念をより身近な内容に落とし込んだ「共通の価値観」を、明確に記しておくべきだと真剣に考えました。

一 苦しい時期があったのですね。

なんとか乗り越えられましたが、確かに苦しかったですね。そしてこの時期に、「ミッション、ビジョン、バリュー」という経営の中核に置く概念を掲げられたことも、当社にとっては大きな変化でした。いつか掲げなければいけないと思っていたのですが、どうしても「業績」のことを優先してしまい、なかなか着手できずにいたものです。このような苦しい時期だからこそ、企業理念をより身近な内容に落とし込んだ「共通の価値観」を、明確に記しておくべきだと真剣に考えました。

一 どのような内容なのですか。

ミッションが「未来のテクノロジーとサービスを提供することで世界を明るくする」、ビジョンが「誰もが憧れ、皆が誇れる会社を創る」、そしてバリューは4つ策定しましたが、なかでも「プリミティブな行動と判断(姿勢)」を重視しています。「プリミティブ」には、「人間的な」という意味がありますが、ミッションやビジョンの追求以前に、「人として正しい行動とはなにか」を考えるべきだということを示しています。これは、「仕事」といったレベルではなく、私たちの日常におけるすべての行動の「基準」にすべきだという考えでつくったものです。

一 具体的に教えてください。

「相手はどう感じるか」「言われたら嬉しいだろうか」「その逆かもしれない」など、自分の言動を相手はどのように捉えるのだろうか、まさに「人として」どう思われるかを考えて行動すべきということです。これは、ある不動産会社の社長から聞いたエピソードが基となっています。その会社では全社員に、来訪者すべての方々に対して礼儀正しく挨拶することを徹底させているそうです。あるとき、同社に出入りしている宅配事業者の社員がその会社のマンションを購入した際、その購入理由が、「私のような出入り事業者に、あそこまで気持ちよく、全員が挨拶してくれる会社はほかにない。この会社のマンションなら、絶対にいい物件だと思った。信頼できると思った」ということだったというのです。まさに、「ビジネスの根源」だと思いました。この「挨拶」のケース以外にも、いろいろなシーンが想定されると思いますが、「信頼」は大きな武器になり得ます。その信頼は、難しいことを行わなければ獲得できないわけではなく、「人として正しい行動」を心掛けていればいいのです。「時間に遅れない」「約束を守る」もその一種でしょう。
私はいま、「『たまたま』は、『まあまあ』ある」という言葉を大切にしています。マンションの話も、「たまたま」買ってくれたケースではなく、日頃からの積み重ねの結果であるため、この会社では「まあまあ」あるケースなのだと思います。私たちは、「ミッションやビジョンの達成」という大きな目標を掲げていますが、日々のそうした努力が積み重なった結果として、それらは達成できるものであり、その重要性を改めて認識できましたね。

一 コロナ禍の危機を乗り越えたいま、今後の成長ビジョンをどのように考えていますか。

コロナ禍の厳しい時期を通じて、それでも頑張ってくれる社員のありがたさを感じましたし、不動産会社の社長のおかげで、「ビジネスの根源」に改めて気づかされました。そうした学びを糧に、これからも頼もしい社員と進化を続け、「業界を変革するゲームチェンジャー」を目指していきます。

LED TOKYO株式会社の応援ページに戻る